ときたま ふぁんたずむ 2006/04/14 発売とっぷすと〜り〜きゃらくた〜だうんろ〜どさんぷるえくすとら
 
深夜――草木も眠る丑三つ時とは、今、この時間のことを指し示す。
街の人間の大半が寝静まる時間。
人でないモノが活発に蠢く時間。
 
そのビルの屋上は、さほど特徴の無い造りをしていた。
規則正しく並んだコンクリートの床タイル。
その周囲を取り巻く網目状のフェンス。
昇り階段の終着点である小部屋の上には、少し錆びついた大きな給水タンクがあるだけ。
ただ、その屋上に特異点があるとすれば。
 
この私がいるということだ。
 
懐から取り出したタバコに火を点ける。
口に咥え、深呼吸をするように大きく一吸い。
 
「ふぅ〜……」
 
 
そして、星空を仰ぎながら、私は長い長いため息とともに、一筋の白い煙を吐き出した。
吐き出された白い煙は、一瞬、天の川のように広がったが、次の一瞬の後には夜の闇に溶けるように霧散する。
一仕事を終えた後の一服は、いつもの習慣だ。
いつもの習慣なのだが。
 
「……まずいな……」
 
誰に不満を言っているわけでもないが、私は眉をしかめつつ、呟いた。
呟きは夜風に流され、掻き消える。
もう一度、大きく吸い、もう一度、大きく吐く。
何度吸っても、味は変わらない。
むしろ、根元に近づくにつれ、まずくなる一方だ。
以前、仕事後に吸っていたタバコはもう少しうまかったように思える。
銘柄を変えたわけでもない、ましてやタバコの質が落ちたわけでもないだろう。
まずく感じるようになったのは、いつからだろうか。
初期は迷える霊を還すことに、シンプルな快感を覚えていた。
自分は世のためになることをしている。
迷える魂を救っているという一種の優越感。
だが、毎年、毎月、毎日、毎時間、毎分、毎秒。
数多の生命が生まれ、数多の生命が亡くなっている生命の循環がおこなわれている以上、迷える魂というのは、
常に湧き出るものだ。
それが、未来永劫に続くことと理解し、自分のしていることがさして意味のない行為と疑い始めた頃から、
いつしか優越感は空虚な感覚に摩り替わってしまった。
きっと、それとタバコがまずくなったのは同じタイミングだろう。
 
「強くなりすぎるのも考えものということか……」
 
空を仰ぎ、私は呟く。
それが自他共に認める事実なのだから、おごりではない。
『稀代の除霊師』としてこの業界に名が轟くようになり、早数年が経つ。
依頼も矢継ぎ早に来る。
1日に複数の仕事を片付けることもザラ。
他の同業者に比べ、格段に安い依頼料で引き受けているという評判もあるのだろう。
そりゃそうだ。
周囲をうるさく飛んでいる蚊をパンと平手で叩き潰す程度の作業で、暴利な金をふんだくれるはずもない。
仕事にもっとスリルがあるのならば、楽しむこともできるのだろうが、相手にしている悪霊が弱すぎて、
まるで手応えがない。
今、私の手にしている札に封じられている、『凶悪な悪霊』とやらも、例外ではなかった。
このビルのオーナーは、幾名もの著名な除霊師がサジを投げ続けた上、ようやく私に辿り着いたらしい。
まったく、この程度の悪霊ごときで根をあげるなど、同僚の職務怠慢ぶりには甚だ閉口する。
火が点き、灰の部分の長くなったタバコを再度咥え、吸い、そして、吐く。
 
「やっぱりまずいな……」
 
税金の兼ね合いで高くなる一方のタバコに罪がないのはわかっているのだがな。
まだ少しだけ吸う部分の残っているタバコをコンクリートの地面に投げ捨てる。
そして、親の……いや、祖母の仇のようにヒールのかかとで強く踏みにじって消した。
――かれこれ3年ほど世話になったが、禁煙する日も近いかもな。
そんな柄でもないことを、少しだけ思ってみた。
 
        *   *   *
 
明け方、一仕事を終えてマンションに戻った私は、羽織っていた薄手のコートを乱雑に投げ捨てた。
部屋の空調の電源を入れ、仕事用のパソコンの電源を立ち上げ、テレビをつける。
まったく電力様サマサマ、近代文明サマサマだ。
そして、立ち上がったパソコンのメール確認。
メールフォルダには受信した未読メールがずらっと並び始める。
ほんの半日ほど出かけている間に、依頼メールは100件近くにも昇っていた。
火の点いていないタバコを口で玩びつつ、依頼内容を見る。
 
――遊び気分で降霊したら、誤って友達にとり憑いてしまった。
 
その程度なら、私が出るまでもない。
どこかの神主にでも祓ってもらった方が格安だ。
 
――霊が物を隠すので困ってます。
 
大切なものなら、家に魔除けの札でも貼っておけばいい。
その程度のイタズラしかできない霊ならば、札の1枚でおとなしくなる。
 
――結婚してください。
 
私より強く、容姿に自信があるならば考えてやらないこともない。
添付されていたメール送信者本人と思わしき、駄馬を青汁で2時間コトコト煮込んだような男の画像を見た瞬間、
そのメールはゴミ箱に放り込んだ。
本当に私を求めるメール、興味を引くメールなんてのはなかなかないものだ。
どこぞのRPGやマンガのように、魔王様なり閻魔様なりがこの世に出てくれば、少しは楽しめるのかもしれないがな。
そんなことを思いながら、メールを片っ端から返信し、用のない物は削除していく。
だが、引き受けるほどの仕事は何ひとつない。
立ち並んでいたメールが減り、残り11通まで行った所。
 
「ん?」
 
ふと、キーを叩く手が止まった。
1通、不可思議なメールが来ていた。
 
【件名:依頼】
 
それは簡潔すぎる故に、目を引いた。
ダブルクリック。
 
【七宮芹殿へ 至急来られたし】
 
本文もまた簡素すぎた。
 
「……なんだ、このメールは?」
 
思わず独り言が出てしまうようなメールだった。
宛先は ragou@goutoku.ne.jp
ラゴウ? ゴウトク?
 
「……ああ」
 
どこかで聞き覚えのある名前だと思えば……。
随分とわかりやすいメールアドレスを使用しているものだ。
いつもならば一瞬で消しているようなメールだが、この送信者には私も興味がある。
ドラッグ&ドロップ。
私はこのメールを保存フォルダに置き、玩んでいたタバコにようやく火を点けた。
タバコはうまくもなんともなかった。
まぁ、不快になるほどまずくなかっただけ、いくらかましというものか。
さて、仮眠を取ったら、彼に会いに行くとしようか。
着ていた服を乱雑に脱ぎ捨て、私は下着姿でベッドに転がった。
 
        *   *   *
 
「いやー、がっははは! 失礼しました!『はいてく』なメカは苦手でしてな!」
私の目の前にいる人物は、大口を開け、豪快に笑っていた。
機械音痴などと大声かつ、大笑いしながら自慢気に言うことでもないと思うのだがな。
 
「はぁ……」
 
故に曖昧な相槌しか打てなかった。
 
「なにせ、『めぇる』でしか仕事をお受けしてくれないと聞いたものですから、うちのパソコン研究会に頼んで、
なんとかお願いしましてな」
 
「でしたら、そのパソコン研究会の人間に、代筆をお願いすれば良かったでしょうに……」
 
「いやいや、手紙は自分で出してこそ想いが伝わるというもの。他人に書かせては相手に対して失礼とは
思いませんかな?」
 
キーボードで打つ電筆に想いも何もないと思うのだが。
ちなみに、あのメールを出すためだけに、壊れたキーボードは6台に及ぶらしい。
最初は勢い余って叩き割ってしまい、2度目は加減して叩いたものの、キーが埋まったまま出てこなくなって
しまったというから、どれほどの機械音痴&怪力かは察しがつく。
 
……いや、私の想像のさらに上を行ってそうだがな。
だが、実際、この学園長が『想いを込めたメール』に惹かれてここに来てしまったのだから、
あながち彼の考えも全部が全部間違っているわけではないのかもしれない。
 
「しかしながら、大変忙しいという噂を耳にしておりましたからな。本当に来ていただけるととは思ってませんでしたぞ」
 
そう、彼のメールに導かれ、私は依頼のあった豪徳学園に来た。
招かれたここは学園長室。
入った瞬間、学園から別世界にでも飛ばされてしまったのかとと思ったその内部に、さすがの私も度肝を抜かれた。
至る所が普通ではない学園だったが、ここは特におかしかった。
出迎えてくれた熊の剥製や、刀、掛け軸などももちろんそうだが、部屋全体に漂う霊波がどこか普通の場所とは違う。
 
「著名な豪徳学園からのメールでしたから。そうそうお断りするわけにも行きませんよ」
「光栄ですな。ご存知でしたか」
 
「ふふ、この学園を知らない者は、この地域にはおりますまい。私自身、この学園にも興味がありましたからね」
 
都が誇るエスカレーター式のマンモス学園。
これだけならば、さほど特筆するべきものでもない。
しかし、一風変わった校舎。
そして、一風変わった校風。
トイレの花子さんしかり、七不思議しかり、学園というのは得てして霊的トラブルの多い場所。
いずれ機会もあるだろうと思っていたが、ようやくその機会に恵まれたということだ。
 
「もちろん、貴方のことも、ですよ。豪徳胤羅剛氏」
 
そして、学園に加えて、眼前にいる設立者・豪徳胤羅剛氏がまた一風変わった人間。
その昔は格闘家として名を馳せていたとか、無一文で全世界武者修行の旅に出たとか、熊、虎、大蛇、鯨などなど
世界中にいる数多の生物を叩き伏せたとか。
どこまで誇張されているかはわからないが、彼が只者ではないのはこうして目の当たりにしているだけでわかる。
 
「いやはや、芹さん、貴女のような綺麗な方に名前を覚えておいてもらえていたとは。長生きはするもんですなぁ、
があっはっはっ!」
 
豪快な笑い声すらも、吹き飛ばされてしまいそうなほどの風圧を放つ。
 
「ふふっ……私こそ光栄です」
 
彼に名を呼ばれ、思わず、私の口許から薄い笑みが零れた。
我ながら、こんな風に笑ったのも久しぶりな気がした。
 
「それでは本題に移らせてもらいますが、お越しいただいたのは他でもない」
 
「伺いましょう」
 
「わしにはよくわからんのだが、どうも我が学園に変なモノが住み着いているという流言があっての…
…稀代の除霊師として名高い貴女ならば、なんとかしていただけると思ったのじゃが」
 
依頼内容自体はごく普通のものだった。
 
「変な噂が広まって、来年の入学志願者が減るようなことがあっては困るからのぅ。
是非、貴女の力を見込んで、お願いしたい」
 
しかし、素っ頓狂な学園だ。
ここにいる霊とやらもさぞや面白い奴なのだろう。
 
「了解しました。では、今晩から早急に取りかからせていただきましょう。差し当たって――」
 
深夜の校舎の開放と、入場許可を申請。
あっけなく受理された私は校舎の屋上で夜を待つことにした。
 
        *   *   *
学園の屋上の、さらに高い出入口の上。
月灯りが静かに私を照らす、夜10時。
気の早い物の怪ならば動き出す時間だ。
そして、ここの屋上にいる霊は、せっかちなヤツだったらしい。
 
「モ゛オ゛ォオ゛ォォォォォォッ!」
 
私よりも上空から、霊力を持たない者には届くことのない雄叫びが轟いた。
その声に私は空を仰ぐ。
その霊は私の位置よりもさらに上にいた。
屋上にそびえ立つのは、決してセンスがいいとは思えない天を指差す学園長の彫像。
その指先と頭を踏む、1つの巨体。
牛――猛牛の霊だ。
体長はおよそ4m。
霊魂は意思によってサイズが多少は弄れるとはいえ、かなり巨大だ。
 
「なるほど……多少は楽しめそうだ」
 
さしずめ、私はギリシア神話のミノタウロス狩りの勇者、テセウスと言った所だろうか。
あいにく、ここはラビリンスでもなければ、捕らわれている美少女もいないがな。
ぶふーっ、ぶふーっと、鼻息を荒くする牛。
存在しているのか曖昧な体躯をゆらめかせ、双眸は私を見下すように睨みつける。
あいにく、見下ろされるのは好きではない。
だからこそ、屋上のさらに高い場所にいたのだが、まさかそれよりも高い場所に現れてくれるとは思わなかった。
 
「そこのかわいいモーモーちゃん、いい子だからおりてくるんだ」
 
私の挑発に、猛牛の眼力が強まった。
まぁ、先ほどから私は敵意を撒き散らしていたのだから、そうでなくては困る。
私を見据える双眸がボウッと気味の悪い赤い光を灯した。
赤い色はマタドール役である私が持つべきなのだろうが。
牛の鼻息がより荒くなる。
もっとも、霊体の身体は呼吸を必要としてはいないのだが、生前の名残だろう。
 
来る――。
 
奴の霊力の流れを感じ取った刹那。
猛牛の足が動いた。
体躯に似合わない、猛スピードで駆けた。
像のてっぺんから私の元へ、自由落下よりも格段に早く。
私は不安定なヒールでコンクリートを蹴り、跳躍する。
牛は数瞬前まで私のいた場所を的確にすり抜けた。
霊体の成すことは霊力の通わない物に物理的な被害はない。
だが、霊力の塊である私には攻撃は当たるし、今の突進が直撃していれば、さすがの私であっても五体満足ではいられなかっただろう。
 
「思っていたよりも速いか……」
 
考えを少々改める。軽く足止めしなければ、うまくコイツを貼るのもなかなか難しそうだ。
左手の指に挟んでいた除霊符が風に揺れる。
右手に握っていた除霊棒を握り直す。
コンクリートの床をすり抜け、空に浮く牛は身体を急旋回させ――。
屋上に着地していた私と視線が合うと、助走もなく、私に再度突進を仕掛けてきた。
初回と同程度の、いきなりのトップスピード。
だが、一度見た行動ならば見切るのは難しいことではない。
直線的に向かってくるその姿は、あたかも、私を弾き飛ばそうとする暴走列車。
私は突進に合わせ、再度、コンクリートを蹴り、跳躍する。
奴の頭上を飛び越えるつもりだったが、私ともあろう者がスピードを少々見誤ったらしい。
奴の角の先端がわずかに私のコートをかすめた。
おいおい、このコート、結構高かったんだぞ?
 
「釣りはいらん!」
 
コートの修繕費とばかりに、私は気合とともに除霊棒を振るった。
霊力を受け、月明かりを受け、白銀の軌跡を描いた除霊棒は、奴とのすれ違いざまに首筋を的確に裂く。
首はほぼあらゆる生物の急所。それは人であっても霊体であっても例外ではない。
 
「ンモ゛オォオォォォッ!」
 
猛牛の身体が大きく揺らいだが、猪突猛進の奴の身体は止まらない。
私はカツンとハイヒールを鳴らし、コンクリートの床に軽やかに着地した。
振り返った奴の首筋からは血の代わりに霊力が噴き出している。
手負い。
 
このまま奴が戦いを続けようとするならば、勝負は決まったようなものだ。
激情した奴は、血の通わぬ瞳を血走らせ、私に突進を仕掛ける。
今までの最高速。
激突すれば、私の身体は跳ね飛ばされるどころか、そのまま四散するかもしれない。
だが、所詮は、動物霊。
激情した所で、行動パターンは至極読み易い。
それが最期の突進だ。
突進の当たる寸前で身をわずかに翻す。
マタドールよろしく、私は自らのコートをなびかせ、奴の視界を隠し――
 
「ン゛モ゛ッ?」
 
「終わりだ。せいぜいおとなしくしてろ、モーモーちゃん」
 
ひるんだところに除霊札を牛の額へと貼り付ける。
これだけのことだ。
 
「ン゛モォオオ゛ォォッ!」
 
刹那、牛の化物の身体は札の貼られた額から順に、光の粒子へと姿を変え、札の中へと吸い込まれてゆく。
いかなる巨体であろうが、それはあつという間の出来事。
後に残ったのは、屋上のコンクリートの上に残る1枚の札だけ。
私自身はかすり傷ひとつとして負うことはなかった。
おっと、コートは少しかすり傷を負ってしまったのだったな。
 
「ふぅーーっ……」
 
猛牛の霊を封じた札をポケットに収め、私は仕事後の一服の煙を吐き出しながら呟いた。
 
「この学園でも、この程度か」
 
正直、期待はずれだった。
どこにでもいる有象無象の悪霊よりはいくらか強くはあったが、それでも大したことのない動物霊だ。
学園の妙な雰囲気に惹かれ、そのままこの場に滞在した悪霊。
害をなす前に未然に処置できたのだから、その点に関して言えば幸いといえただろう。
羅剛氏には「貴方の彫像の脳天を足蹴にしていましたよ」とでも報告するとしよう。
 
「さて……と」
 
タバコをコンクリートに投げ捨てようとした。
が、ここは一介の学園だったことを思い出す。
翌日の朝礼で生徒会長様だかに「屋上に吸殻が捨てられていました。学園内に喫煙者がいます!」などと
いわれのない臨時朝会がおこなわれても学生諸君は面白くなかろう。
コートから携帯灰皿を取り出し、タバコをもみ消す。
やれやれ、と老人くさい伸びをして、屋上の出口から降りようとしたその瞬間だった。
 
ぞわ……
 
脊髄のド真ん中を節足動物が這い上がったような感覚が走った。
 
「なっ、なんだ? 無数の、霊気……!?」
 
バカな、ついさっきまで、感知する範囲内にこんな数は存在していなかった。
屋上から階下を見下ろすと、一般人には不可視の数多の霊体が、校舎を取り囲む壁を文字通りに飛び越え、
この学園内へと侵入してきていた。
校舎。
体育館。
運動部室。
体育倉庫。
学園中の至る所に、霊たちが徘徊し始める。
あまりにも多い霊気。
下手に霊気を感知できてしまう除霊師ならば、発狂、卒倒していてもおかしくないほどの数だ。
……何故?
何故、突然、湯水のごとく、低級霊どもが湧いた。
いや、それは考えても詮無いことだ。
異常事態に私は驚愕や絶望なんてものを覚えるよりも早く。
 
「ふふっ……」
 
笑みを浮かべていた。
何が起きたのかはわからない。
だが、面白い。
わからないからこそ、面白い。
 
「1匹残らず、還してやるとするか」
 
私は出口から階段を一足飛びで駆け下りる。
手始めにこの校舎の中に入ってきた奴らからだ。
ざっと4、50ほどか。
札は足りている、サブウェポンは除霊棒1本あれば十分。
あまりの膨大な霊の数を目の前にし、大量に分泌されるアドレナリンが、私の霊力を高揚させる。
先ほどの牛の化物には到底及ばない雑魚ばかりだが、この異常な数、数、数。
1匹ずつでは相手にならない。
さぁ、まとめてかかってこい、雑魚ども。
この七宮芹を倒せる自信があるのならば!
 
――今晩は少しばかり楽しめそうだ。
 
そう思うと同時、口の中にかすかに残るタバコの味と匂いが、やけに美味に思えた。
 
        *   *   *
 
「がぁっはっはっ! さすがは噂に聞く七宮芹さんですなぁっ!」
 
翌昼、私は除霊が完了した旨を羅剛氏に伝えると、彼は大声で笑った。
 
「まったく、勘弁してください。お話が違うじゃありませんか」
 
私はジロリ、と非難の目を羅剛氏に向けつつ、コートのポケットから取り出した札を見せつけた。
その枚数、ちょうど100枚。
この札の1枚1枚に昨晩封じた悪霊たちが納められている。
 
「まさに百鬼夜行です」
 
さすがに一晩でこれだけの数を相手にしたのは新記録だ。今までのダブル、トリプルスコアどころの話ではない。
 
「いやはや、申し訳ない。あいにくワシは幽霊とかいう類が見えない体質でしてな。見える相手ならば、
ワシが拳で片をつけてやるところなんですがの」
 
ギュッと拳を固めた音が聞こえた。
 
「ところで、依頼料の件ですが……」
 
「おお、失礼失礼――」
 
ごつい手で彼は1枚の紙に、机に置いてあった筆でサラサラと文字を書き始めた。
 
「――このぐらいでよろしいかな?」
 
羅剛氏は私に1枚の小切手を差し出した。
本来の依頼料よりも数倍に相当する額だったが、【追加オーダー:100体】を考えれば、これでも格安な方である。
とはいえ一晩でこれだけ稼げたと考えれば、御の字。一般家庭ならばこれだけで2、3年は一家揃って働かなくても
食べていける。
 
「昨晩、霊の1体から話を伺ったのですが――」
 
その話を聞いた霊が収められていた札をこれみよがしにヒラヒラと見せ付けつつ、私は言葉を続ける。
そいつはなんとか話の通じた、元人間霊。
生前はこの付近で暴走族の頭を名乗っていたそうだが、無謀運転によるバイク事故で死んだらしい。
ちなみに彼には「自業自得だ、阿呆」という有り難いお経を唱えてやって、あっさりと封じ込めた。
 
「どうやら、屋上にいた牛の霊がこの地域のボスだったそうですね。それを私が倒してしまったため、ボスのいなくなった
この学園を巡って、数多の霊が集ってきた……」
 
「ほうほう、それはそれは。ここに居座ったモノが一番強い、などという幽霊同士の覇権争いといったところですかのぅ」
 
「まぁ、そんなところでしょうね」
 
「がぁっはっはっ!」
 
と、彼はまた大きく笑った。
一番上の者がいなくなれば、下の者がそのポストを巡って抗争を始める。
人間の世界にかかわらず、霊の世界にかかわらず、どこにでもある話だ。
 
「おそらく、今晩も……いえ、今晩に限らず、今後ずっと。学園の椅子取りを巡って、また数多の霊が
やってくることでしょうね」
 
随分と賑やかな椅子取りゲームだ。
 
「それは勘ですかな?」
 
「いえ、経験に基づく推測です」
 
「ふむ……」
 
「あの程度のレベルならば100程度の数、私にかかれば問題はない。ですが、毎晩、こんな額を
私に支払い続けていたら、コチラの学園はいずれ廃校になりそうですね」
 
「ふむ、廃校か。それは困るのぅ」
 
本当に困っているのだろうか。
学園長の言葉に困惑や危機感といったものは微塵も感じられなかった。
 
「まぁ、どうですかな。冷める前に1杯」
 
こんな切羽詰った状況にも関わらず、呑気に茶を進めてくる辺りからも伺える。
テーブルに出されていた緑茶はまだ湯気を立てていた。
 
「……いただきましょう」
 
私は湯のみを手にとり、学園長が直々に出してくれた緑茶を口に含む。
 
「……む」
 
舌の根元にわだかまる、ほどよい苦味が心地よかった。
煎れてから少し経ったお茶は温度も熱すぎず、濃すぎず、ちょうどいい。
パソコンのキーボードを素手で粉砕してしまうような人が煎れたとは思えないほど、繊細な味だった。
 
「よかったら、こちらも。口に合えばよいのですがの」
 
一緒に出されていたお茶菓子。
くるみゆべしだ。
羅剛氏は1個を丸ごと口に放り込んでいたが、私は細かくちぎっては口に運ぶ。
 
「……ふむ、これは美味しい」
 
素朴な甘さ。
大粒のクルミの香ばしさ。
口の中に残っていた緑茶の苦味と渾然一体となる。
 
「口に合いましたかの。一風堂のゆべしはワシのお気に入りでな」
 
「それはそれは。気が合いますね、私も和菓子には目がなくて。そして、このゆべしに緑茶がまた合う」
 
ずず……と、茶を再度すする。
まるで縁側での老人の茶飲み話のように語らいながら、私と羅剛氏は向き合い、微笑み合った。
緑茶と和菓子が好きな人間に、悪い奴はいないというのが私の持論だ。
もちろん、この私とて例外ではないわけだが。
 
「それで、芹『先生』。無礼を承知で申し上げるが」
 
「……何か?」
 
私の敬称に若干の違和感を覚えつつ、私は返事をした。
 
「我が学園に勤務する気はありませんかな?」
 
彼の口から出た言葉は、私の想像を2回り半ほど超えていた。
 
「……はぁ?」
 
突然の申し出に私は思わず間の抜けた言葉を返してしまった。
驚くことにはなれているつもりだったが、あまりの突拍子のなさ。
こんな声を出したのも随分と久しぶりな気がする。
 
「いや、実を申しますと、芹先生のような除霊師を雇ったのも、1度や2度じゃありませんでな」
 
「でしょうな。この学園の物珍しさが引き付けるのは、人間だけではないようですから」
 
人間だけでなく、霊体の興味をも惹いてしまう『何か』が、この学園にはあるらしい。
故に、昨晩は数多の霊が学園に集った。
 
「ですから、除霊師である貴女に在籍していただきたい。貴女がこの学園にいれば、悪霊とやらも
早々近づけなくなるのではないかと思いましてな」
 
「羅剛氏――」
 
私は羅剛氏の双眸を見据えた。
 
「――それは私を、七宮芹と知っての発言か?」
 
これでも眼力には自信がある方なのだが。
 
「ええ、もちろん、稀代の美人除霊師、七宮芹と知っての発言ですぞ。どうですかな、芹『先生』」
 
羅剛氏は私の視線を、柳の木のようにいとも容易く受け流し、笑みを浮かべながらそう言った。
きっと彼の中では、私が勤務するということは既に決定事項に違いない。
私はフゥと溜息をついた。
 
「まったく……強引ですね。羅剛氏、あなたという方は」
 
「申し訳ない、面倒くさいことはできぬ性分でしてな。かれこれ80年以上もこうして生きてきてしまった。
今更、矯正もできんので、諦めてもらえれば幸いなのじゃが」
 
がっはっはっ! と、彼はまた大きく笑い、テーブルに置かれていたゆべしをポイッと一口で頬張る。
私は強引な人間が嫌いではなかった。
稀代の除霊師として、尊敬、または畏怖される立場となってからというもの、へこへこ頭を下げ、媚びへつらう奴を
見続けてきた反動かもしれない。
 
「なるほど……」
 
「ご理解いただけましたかな?」
 
「理解はしましたが、『はい、そうですね』と、言うわけには行きません」
 
「ほう……?」
 
「私は私より弱い奴の下につくつもりはないもので」
 
羅剛氏の眉がピクリと動いた。
それは私の言葉が興味を惹いた証だろう。
 
「もちろん、格闘家としてもご高名な、豪徳胤羅剛氏を愚弄しているわけではないのですがね」
 
「ふぅむ……」
 
羅剛氏は考える素振りを見せたが。
 
「ならば、わしと一戦、交えてみませんかな?」
 
一瞬の後に、そう言った。
素振りだけで、あらかじめ考えてあった言葉に違いない。
 
「なるほど。それはそれは、とてもシンプルですね」
 
「わしか芹先生、お互いのどちらかが相手から1本を決めたら、条件を呑むということでいかがかな?」
 
羅剛さんは自身の提案にニヤリ、と実に楽しそうな笑みを浮かべた。
やはり、彼はそういう人だ。
 
「ふむ」
 
彼同様、私も考える素振りを見せるが、心の内では大方が決定していた。
 
「なるほど、羅剛さんが勝ったら、薄給で学園の講師でもなんでもやらせていただきましょう。
ですが、私が勝ったら――」
 
勝った時の、私にとっての好条件が思いつかなかった。
 
「――勝った時に提案させていただきます」
 
勝った時の条件などどうでもよかったのかもしれない。
私自身、楽しい戦いに飢えているのだから。
 
 
        *   *   *
 
私と羅剛氏は校庭へと場所を移した。
学園長室が普通の教室よりは広さがあるとはいえ、私たちが戦うフィールドとしては、物が多過ぎ、そして、狭すぎる。
「おいおい! なんかまた学園長が面白いこと始めたぞ!?」
 
学園長と私が並んで廊下を歩き、校庭に対峙しているのを見て、どこからともなく、学生のギャラリーが
集まってきていた。
 
「ふむ、ギャラリーは多い方がいい」
 
「大した人気ですね」
 
「なぁに、芹先生も、うちの学園に勤務すればあっという間に人気者になれますとも」
 
「ふふ、それはまた魅力的だ」
 
校庭で向かい合う、私と羅剛氏。
一応は一組の男女とはいえ、とても恋愛ドラマの始まる雰囲気ではない。
私たちの年は、あまりにも離れすぎている。
それ以上に、お互いが闘気を放ち過ぎている。
私は懐に手を入れ、得物を取り出した。
 
「私はコレを使わせてもらいますが、構いませんか?」
 
シャキッと、私は除霊棒を延ばし、指の間に1枚だけ札を挟んだ。
除霊師という職業を見たことがないであろう学生たちの間から少々どよめきが起きた。
 
「もちろんですとも。わしは全身に武器を抱えているわけですからな」
 
羅剛さんの指の関節がポキポキと鳴った。
全身之兵器。
と、言わんばかりの彼の体躯。
 
「では、はじめましょう」
 
「うむ」
私は除霊棒を構えた。
羅剛氏もまた構えの姿勢を取った。
その間合い、およそ10m。
これだけ広い間のはずなのに。
彼の全身から漲る裂帛の気迫は、これだけ遠くにいるはずなのに眼前に拳を突きつけられているような、
動いただけで一撃でやられてしまいそうな、そんな錯覚を覚える。
向き合って、数秒。
私にとっては、1分ほどにも感じられたその時間。
羅剛氏はフゥッと息を吸い、警戒を一瞬だけ解き。
クイクイッと右手を動かした。
かかってこい、と挑発している。
……面白い。
私はヒールで地面を蹴った。
10m程度の間合い、一瞬で縮まる。
 
「ふっ!」
 
羅剛氏と視線を合わせ、霊力を込めた除霊棒を振り下ろす。
除霊棒の破壊力は込められた霊力に比例する。
それは対霊であっても人間であっても、変わることはない。
 
ビシッ!
 
私の右腕に握った除霊棒の一閃を、羅剛氏は左腕で受け止める。
直後、カウンター気味に放たれる羅剛氏の右腕。
私も左手に仕込んでいた札を羅剛氏に向ける。
簡易結界。
札の周囲にだけ、物理攻撃を阻害する障壁を張る。
パシッ! と、紙を勢いよく左右に引き裂いた時の音がして、羅剛氏の拳の威力は相殺された。
その弾けた勢いで、体が後ずさり、羅剛氏との間が2mほど開いた。
……私の作る結界は、ダンプカーの突進も防げるはずなのだがな。
今一度。
間合いを詰め、再度除霊棒を振るう。
再度、羅剛氏の腕で止められるものの、勢いを殺さぬまま、そのまま2、3度と振るう。
右、左、下、上。
その全方位からの連続攻撃を、羅剛氏は全て腕で止める。
 
ギィンギィンギィンッ!
 
鋼鉄を殴っているかのような感触。
微細な傷ぐらいは与えているかもしれないが、決定打にはあまりにも遠い攻撃だ。
しかし、反撃は許さない。
攻め続ければ、微細なダメージだとしても、いずれは綻びが生まれる。
私の放つ連撃の合間、突如放たれた拳を身を翻し、紙一重で交わす。
一進一退ではない、互いに進まず退きもしない攻防。
 
「うおおおおおおっー!」
 
会場の学生たちが沸く。
スピードでは決して負けていないはずだが、私の連撃の合間に拳をねじ込まれる率が徐々に上がっている。
リズムを読まれているのか、私の動きにこそ綻びが生まれているのか。
どう見てもタフそうな羅剛氏。
私も同年代の男性と比べても、スタミナにはひけを取らない自信があるが、全世界を渡り歩いた彼と比べれば、
その差は圧倒的だろう。
長期戦になれば私の方が不利なのはいうまでもない。
一旦間合いを取り、札を用いた目くらましなどの小細工をすることもできるが、それはこの戦いの矜持に反する気がした。
彼とは真っ向から戦い合わなければ意味がない。
手を出す暇をあたえない連撃。
しかし、それでも私の連撃の合間に差し込んでくる羅剛氏の鉄拳。
彼の放った右拳は、私の脇腹付近の空を切った。
対する私の手に握られた除霊棒は高く振り上げられている。
 
――チャンス!
 
私は振り下ろす除霊棒に両手を添え、両手から霊力を注ぎ込んだ。
両手で一気に押し切り、羅剛氏のガードを崩し、霊力最大の一撃を叩き込む!
それが私の描いたシナリオだ。
両手を添え、渾身の力で除霊棒を振り下ろす。
伸びきった羅剛氏の右腕はまだ戻っていない。
彼の防御が左腕だけならば、絶対に崩せる!
胸のアミュレットが、私の霊力に呼応して、淡い光を放つ。
周囲の学生たちの歓声が聞こえる。
 
ドンッ!
 
私の除霊棒は羅剛氏の左腕に命中し――。
 
「ぬ、ぬぬっ……」
 
「ぐっ……!」
 
地面が凹むほどの衝撃。
そのまま押し切る。押し切る。押し切るっ!
ほんの刹那の時間が異様に長い。
腕一本の厚さが、やけに遠い。
 
「残念、じゃったのう」
 
羅剛氏は呟く。
言葉の通り、羅剛氏は私の渾身の一撃を受け止めきった。
 
「いえ、まだです」
 
羅剛氏が自分の左腕に乗る除霊棒を弾き飛ばそうとしたのと、私が除霊棒を短く縮めたのは、まったくの同時。
 
「ぬぅっ!?」
 
羅剛氏の手が再び空を切る。
姿勢を低めた私が懐から取り出した札を繰り出すのと。
若干体勢を崩した羅剛氏の拳が私に当たるのと。
どちらが速いか。
 
バチィッ!
 
再度、同時。
羅剛氏の放った拳は、私の取り出した札の張った威力にぶつかり、留まる。
 
バチッ……バチッ……!
 
「んぬうぅうぅうぅぅぅぅっ!」
 
羅剛氏の怒号に大気が震えた。
結界に阻まれた腕をそのまま振り抜こうと足掻く。
そして、その腕は、じわじわと、私の威力を侵食してゆく。
次の札を取り出している余裕はない。
右手に握っている除霊棒に霊力を込める余裕も時間もない。
次の手を考えているうちに、羅剛氏の拳は私に近づく。
 
パシィンッ!
 
札が高い音を立て、私の手の内で弾けた。
それは私の身を守るものがなくなったことを意味する。
後ろに跳べば、回避できたかもしれない。
だが、足は望むように動いてくれなかった。
時間がスローモーションになったように、羅剛氏の拳が自分の目の前に迫ってくるのを私の目は捕らえていた。
 
――ダメだ、やられる……っ!
 
思わず、目を閉じた瞬間。
一陣の風が私の髪をなびかせた。
だが、そのまま、何秒か経ってもそれ以上の衝撃は走らなかった。
 
「え……?」
 
おそるおそる、私は目を開く。
見えたのは、羅剛氏の5本の指、硬く堅く握られた拳。
眼前数センチ。まさに寸止め。
彼の放った拳の風圧が、私の髪をなびかせていた。
 
「ら、羅剛氏……?」
 
「これでわしの1本……ということで、いかがですかな?」
 
ニカッと、羅剛氏は笑みを浮かべた。
 
「…………」
 
彼のあまりの笑顔に呆気に取られてしまう。
 
――この人には、敵わない。
 
私は心からの負けを認めた直後、私は腰が抜けたように、へたりと座り込んでしまった。
 
「おっと、当たってましたかな?」
 
そう言って、羅剛氏は慌てて私に手を差し伸べる。
つまり、それは、私に攻撃を当てるつもりなど、端からなかったということだ。
 
「い、いえ……」
 
最後の札の威力を突き破る際にか、彼の拳は若干皮がめくれていた。
渾身の一撃を受け止めた左腕には除霊棒の型に少し凹んでいる。痣くらいにはなってくれるかもしれないが、
傷というには程遠い。
他にも私の攻撃を散々受け止めていた腕には、目立った傷はない。
まったく、どこまでこの人は化物じみているのか。
稀代の除霊師として恐れられていた私が、まるで子供だ。
……いや、彼から見れば、私もここの学生となんら変わらぬ子供なのだろう。
私を支えてくれた羅剛氏の手は、大きく、広く、温かった。
 
「それでは、今後ともよろしく、ということでよろしいですかな、芹先生?」
 
「ええ、よろしくお願いします」
 
支えてくれていた手を握手に替え、私はここで彼との契約を結んだ。
 
「おっと、わしは勝者ということで、もうひとつだけ条件を出させてもらいましょうかのぅ」
 
「なんですか? 負けた身ですから、できうる限りのことはしますが」
 
「また、たまにお手合わせ、お願いできませんかのう? いやぁ、久しぶりに楽しい戦いができた」
 
ニカッと、彼は再び太陽のような笑みを浮かべた。
この人には絶対に勝てないような気がした。
 
「――しばらく、フリーの除霊師は休業だな」
 
私の退屈な仕事は、同業他社に頑張っていただこう。
 
「む? 何かおっしゃいましたかな?」
 
「いえ、独り言ですよ。『学園長』」
 
 
        *   *   *
 
そして、私には保健室が与えられた。
ちょうど養護教諭が辞めてしまった直後であり、基本技能として応急手当や介護の心得も
ある私にはうってつけだった。
授業中に教室でタバコは吸えないから、何かの担当教諭になるのも勘弁だった。
まぁ、保健室ならいつでも吸っていいというわけでもないだろうが、学生の諸君には我慢していただくとしよう。
まだ見慣れない保健室からの景色。
校庭で部活に勤しみ、青春を謳歌している我が学園の生徒諸君を眺めながら、いつもと同じ銘柄のタバコに火を点け、
ふぅーっ、と長く、白い煙を吐き出す。
保健室がうっすらと白く煙る。
「……美味いな」
 
久しく忘れていた、タバコの味を思い出した。
 
...to be continued "TOKITAMA PHANTASM".
 
未来人も宇宙人も超能力者も超監督も出てこなくて、すみません。
その代わり、人外はいっぱい出てきた本作となりました。
 
現行のブームがブームなので、タイトル先行な作品と思われそうですが、
書きあがった後でも、ずっとタイトルが思いつかず、迷っていたのは昨日の話。
どうしようかなぁ、なんか芹先生、終始憂鬱気味だしなぁ……。
……ああ。
 
玉:「七宮芹の憂鬱でどう?w」
 
天:「うはww採用www」
 
玉:「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
 
そんな流れで決定してしまいました。
ここまでやっちゃったらせっかくなので、
タイトルフォントもリスペクトしてもらいました。
でも、
 
S 世界を
O 大いに盛り上げるための
S 芹先生の

 
は、発足しないと思います。
 
このお話からちょっと後。
入学してきた平助と芹が出会い、入学から本編が始まるまでのちょっと爛れた性生活☆
という話も考えていたのですが、
それをお披露目する日はあるのやらないのやら。
 
    wright: 玉城琴也
 
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