琴音「で、せっかく2人きりなんだし、聞きたいことあるんだけど」
裕樹「何だよ?」
琴音「目当ての子は、そろそろ決まったのかしら?」
裕樹「……何のこと?」
琴音「こんなに女の子たちに囲まれてるんだから、1人や2人くらい、
意中の子もできるでしょ?」
ああ、そういうことか。いかにも先輩らしいからかいというか、なんというか。
琴音「よかったら、おねーさんにちょっと教えてくれないかなーって、思ったんだけど」
裕樹「……いないよ、そんなの。大体、いたところで何で先輩に教えないといけないんだ」
琴音「執行部会長だからねえ。若い子たちが道を誤らないか、これでも気を遣ってるのよ」
琴音「で、誰なの? 執行部。それともクラスメート?」
何というか、勝手に微笑ましいものを見るような目で見られても、その、困る。
琴音「それじゃひょっとして、あたしって可能性もあるのかしら?」
裕樹「それはないなあ……」
琴音「むう、失礼ねえ。それはあたしを女としてみてないってこと?」
裕樹「いや、外見は十分だけど、中身は……」
琴音「んしょっと。じゃ、こんなのはどうかしら?」
裕樹「どわっ!?」
肩越しに背中に当たる柔らかな感触。まさかしなくても、これは……!
琴音「どう? これでも女として興味ないかしらー」
裕樹「ちょっ!? 誰かに見られたら誤解される!」
耳元で息を吹きかけてくる。
琴音「ほらほら、気をつけないと車に轢かれるわよー?」
ふっと、先輩が俺の目を見て、微笑んだ。