唯「ゆ、唯で、いいですっ! 友達はみんな唯って呼んでますっ!
唯って呼んでくださいっ!」
裕樹「そう? それじゃ、唯ちゃん。これからもよろしくね」
唯「みゃっ!?」
俺は手を差し出した。
一菜「あー、兄ちゃん、兄ちゃん。唯にゃんってば、男の人に免疫がないんだよねー。
握手なんて、もってのほかでさ」
裕樹「あ、そうなのか」
いきなり握手するってのはハードルが高いか。
手を引っ込めようとしたその瞬間。
唯「まままま、待ってくだひゃいっ!」
声を裏返して、叫んだ。
裕樹「は、はい?」
唯「あ、握手、しましょうっ!」
唯ちゃんはおずおずと手を伸ばしてくる。
一菜「おぉ、唯にゃん、積極的だねぇ?」
近づいたと思えば、遠ざかる。
裕樹「別に捕って、食いはしねぇよ……」
一菜「どうかなー。唯にゃんのおっぱいを、じぃっと見ちゃうような先輩だからなー?」
唯「みゃー!?」
裕樹「してない、してないよ! こら、カズちゃん、余計なこというな」
唯「そ、そうだよ、カズちゃんっ!」
おずおずと手を伸ばす。
俺の手まであと2cmというところまで来て、手が止まる。
唯「すーはーすーはー、ひっひっふー」
それは何か産まれちゃう呼吸法だ。
ふるふると、ゆっくりゆっくりと手を近づけてきて……
一菜「唯にゃん、なーにチンタラやってんのーっ。そーれ、ドーン!」
唯「みゃーっ!?」
唯ちゃんの背後から一菜ちゃんが押した。
裕樹「のぅっ!?」
その弾みで、彼女の手が俺の胸元に触れる……。
どころか、勢い余って、俺は彼女に押し倒されるような形に。
一菜「わーおぅ、唯にゃんってば、積極的ぃっ♪」
唯「ひにゃあぁっ! わぁ、んわわわあぁぁっ!」
俺に圧し掛かったまま、足をジタバタさせ錯乱している彼女は…
唯「はぅ、はうぅぅううぅ……きゅう」
オチた。
裕樹「俺の上で気絶するなっ! おいっ!」
騒ぎを聞きつけて、クラスメイトが集まってくる。
睦月「神谷くぅん? いったい、私の妹に、何を、してるのかしら?」
その中には、彼女の姉であり、俺の天敵でもある藤間(姉)の姿もあった。
裕樹「俺のせいじゃねーよっ! そもそも、唯ちゃんの友達……って、
どこ行きやがったっ!?」
気がつくと、遠くまで逃げてやがる彼女は傍観者を決め込んでいた。
一菜「ごっめんねー、兄ちゃーん♪」